~ 開発者の憂鬱 ~


2012年2月 6日(月) 05:59 JST

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感じる雨

雨が降っている。
雨は平等に降り注ぐ。時間が流れると同じで、雨も自然と流れる。そして、外に出れば、雨に濡れることを覚悟しなければならない。
雨が好きな人にも、雨が嫌いな人にも、雨は平等に降り注ぎ、身体を濡らしていく。

 僕は、雨を感じるのが好きだ。雨が平等に、そう幸せな人にも不幸だと思っている人も平等に雨は勢いを変えることなく降り注ぐ存在である。僕は雨に濡れる事も嫌いではない。雨に濡れている時には、一つの事を除いて忘れられるからだ。そうただ一つ、僕の心の中にある出来事そして、忘れることを許されない僕の罪そして、無限に続く僕への罰。僕は、その罪と罰を背負っていくことで、彼女を忘れる恐怖から逃れることが出来る。

 あれは、中学にあがったばかりの頃、僕は一人の女の子に恋をする。多分初恋だったんだと思う。それ以前にも気になる女の子はいたが、彼女だけは別格であった。全てを超越して彼女は、そこに存在していた。雨降る中を、赤い傘で雨を防ぎながら歩く姿と、そこから聞こえてくる彼女の話し声が僕の脳裏に焼き付いて離れない。
 僕が、彼女に恋をしたのは単純な事だった。彼女は、テニスをやっていた。放課後、夕暮れを家路に急ぐ僕が、河川敷のテニスコートで部活をしている彼女を見つけた。その時に、雨が降り注いできた。その中で、雨に打たれながらしばしの空白の時間。でも、僕が彼女に恋をするのには十分な時間が流れた。雨に打たれて、雨に濡れて、彼女だけが光っていると錯覚したのだろう、まぶしく...そして、愛おしく思ってしまった。それから、僕は彼女を目で追うのが日課になってしまった。
 それから、1年が過ぎ....進級をし、彼女と同じクラスになる事ができた。僕は、彼女に気持ちを打ち明けることにした。
 それが、僕の罪の始まりだった。

 僕の気持ちとは別の次元で話が進んでいたことを、幼かった僕は感じる事が出来なかった。そして、大きな過ちをしていた事に僕は気づくことさえ出来なかった。僕には、一つ上の幼なじみの女の子が居た。昔から、一緒に遊んでいたし、女性だと意識したことは無かった。しかし、それは僕の感情で、女の子の感情では無かった。そして、その女の子は、彼女の先輩としてテニス部に所属していた。自分で言うのも変だが、僕は学校中でも目立つ存在であった。別に成績が飛び抜けていいわけでもなく、運動神経が飛び抜けているわけでもなく、ハンサムと言うわけでもないが、何かしらの行事ではキーパーソンとなる役所をやることが多かった。その人間が、毎日のようにテニスコートに行っていれば、噂にならないはずがない。そして、一つの誤解から始まった恋心があった。女の子は、僕に恋心を持ってしまった。
 そして、女の子は、雨の日に、僕に気持ちを打ち明ける。僕は、彼女が好きだと....女の子に伝える。

 僕は、部活が休みになる雨の日に、彼女を呼び出して、自分の気持ちを伝えた。
彼女は、涙を見せ一言
「嬉しい。けど、ダメなの...」それが彼女からの返答だった。
そして、暫くは平穏な日々が流れていった。彼女も気持ちを伝える前と同じ様に僕に接してくれた。女の子だけが、僕から離れるようにそして...。
雨の降った土曜日。僕はいつものように仲間達と釣りに出かけた。そこで一人の友達がおもしろ半分に彼女の家に電話をした。そして、僕に受話器が回ってきた。何を話せばいいのか...そして、何を思えば良いのか....。
「ねぇまだ私のこと好き?」
彼女から思いも寄らない言葉を投げかけられた。そして、彼女の声を聞いた最後の瞬間となってしまった。僕は、何も言えないまま受話器を置いてしまった。気まずい空気が流れる中、一人の友達が僕の肩に手をかけて...
「よし、釣りを続けよう」そう言って、場を取り持ってくれた。
数日後、学校が始まる前に僕の所に、彼女が自殺したと言う知らせが入った。僕は、なんのことか解らないまま、彼女の家に急いだ、そこには数名の女子と学校の先生が居た。そして、何が起こったのか解らないで居る僕の目に彼女の笑った顔が飛び込んできた。ただ、その表情は二度と変わらない。そして、もう二度と僕に話しかけてくれる事のない彼女の姿が在った。
僕の脳裏には「ねぇまだ私のこと好き?」この言葉だけが空しく哀しくそして、淡い記憶として....焼き付いてしまった。その時に、脳裏に焼き付いた言葉を流すかのように、僕の身体を雨が濡らし始めた。僕が何か答えていれば、そして...僕が気がついていれば...。

 答える事が出来ない・答えが出ない言葉を残して彼女は、僕の前から消えてしまった。
---
 それから数年。高校に進んで、専門学校に進路を決めた僕に、懐かしい友からの電話が入った。
「出てこられないか?」別に用事も無かった僕は、友からの誘いを快く承諾した。
 その友から、彼女の自殺の原因を聞いた。僕が絡んでいたこと、女の子が学校全体を巻き込んでのいじめを行っていた事....。
 友は、それだけ話すと黙ってしまった。
「おまえが知らないのはしょうがない。あいつ、おまえにだけは知られたくなかったっと言っていた。俺もこの事を胸の奥で眠らせていたが、おまえが町をあいつが居た町を出て行くのなら知っておくべきだと思ってな」そうだったのだ、薄々気がついていたが事実として認めることが出来なかった。それだけを話して、友は僕を立たせた。そして、軽く抱擁して...「あいつ、おまえの事が好きだったんだよ。おまえには知っていて欲しかった。俺も、あいつの事が好きだった。告白してそう告げられた」それだけ耳元で言うと、友は僕から離れて、載ってきたバイクに乗って走り去ってしまった。
 その時に、僕の目から大粒の涙がこぼれ落ちてきた、そして...その涙を消し去るように、雨が僕の身体を濡らした。
翌日朝刊に、
「高校生が運転するバイクが、中央分離帯に激突。運転する高校生死亡」
そして、僕は友を失った。

---

 この話が実話かどうか....そういう事をよく聞かれます。
 私の事を知っている人は、直接聞いてください。ただ、私が本当の事を言うかどうかは解りません。でも、嘘は言いません。真実は、私と彼女と友だけが覚えていれば良いのですからね。

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